10月にカザフスタンのアルマトイで行われた、フィギュアスケートのチャレンジャーシリーズの、デニス・テン・メモリアルチャレンジを現地観戦してきました。
備忘録をかねた訪問の記録と、同じように海外にフィギュアの試合を見に行きたいと思っている方の為に、デニス・テン・メモリアルへの行き方や、海外の試合がどんな感じだったかも書いていこうと思います。
前置きですが、私自身は「海外旅行好き」の方がメインの、フィギュアスケートに置いては非常にライトなファンです。
アイスショーや試合の観戦には行きますが、選手のエレメンツ一つ一つやプロトコルの加点減点について子細に熱く語れるような知識はありません。(そのような方々を見て日々恐れおののいているので)
初ッ心者丸出しの感想だなあとか思われたらすみません。
試合概要と現地観戦を決めた理由
今年は旧首都のアルマトイで、10月2、3、4日に開催されました。
公式サイト

カザフスタンには、2018年に殺されてしまった自国の選手、デニス・テンの彫像に会いにいつか行きたいと思っていて、それならば、彼の遺志を継いで始められたこの大会も現地に見に行けたらと考えていました。
今季も初めはいつも通り、日本開催の大会の観戦を考えたのですが、昨年行ったNHK杯は今年は大阪開催で、私の最推しのアメリカのジェイソン・ブラウン選手が、まさかのエントリーなし。
グランプリファイナルは今年日本開催なので行きたいなと思ったのですが、名古屋だし、ジェイソンはきっと進出しないよな… と思い、迷っているうちに抽選期間が過ぎて、チケットを買いそびれたままアリーナ席がソールドアウトしてしまいました。
そんな中で選手のエントリー一覧が発表されたのが、カザフスタンのデニス・テン・メモリアルチャレンジ。
今年は男子の顔ぶれがかなり豪華でした。
カザフスタンからは、昨シーズンの四大陸選手権で優勝、世界選手権で銀メダルと大きな活躍を見せた、ミハイル・シャイドロフ選手、ジョージアから国別対抗戦でも来日していたニカ・エガゼ選手、なんと韓国の貴公子ジュンファン・チャ選手、そしてなにより大好きなジェイソン、と申し分のないメンツです。
考えていたグランプリファイナルと費用を比較しても、名古屋だとなんだかんだ往復の新幹線、ホテル、チケット、とかなりかさむし、対して羽田とアルマトイの往復の航空券は思ったほど高くなく。なにより驚いたことに、デニス・テン・メモリアルチャレンジは入場が無料でした。
だったらなんかもう、カザフスタンまで見に行っちゃおうか☆と思い、決断しました。
そしてやはり現地観戦を決めた一番の理由は、10年以上ファンであるジェイソンの現役の姿をあとどれだけ目にできるかという考えでした。
推しは推せる時に推せというもの。
先述の通り、フィギュア自体はライトなファンで、集中力と体力が持たないので、試合を全日程通しで観戦した事はありません。(チケット代も馬鹿にならない額になるし)仕事もそこまで休めないので、今回も一日だけ、男子のフリーが行われる土曜日に観戦することにしました。
嬉しいことに夜にはエキシビションが開催されるので、予定としては一日中フィギュアスケート観戦となりました。
カザフスタンは難易度高め
せっかく海外まで見に行ったので、会場に辿り着くまでも書いていこうと思うのですが、カザフスタンは旅行先としては結構難易度が高めだなと感じました。
滞在において注意が必要な国では特にないのですが、自分から行動を起こさないとなかなか攻略できないなと思います。
まずは中国国際航空に乗って、羽田から北京乗り継ぎでアルマトイへ向かいます。
中国はSNSが軒並み使えないので大の苦手なんですが、格安だったから背に腹は代えられない。それから飛行機が小さいのもあり、全便で座席にモニターがありませんでした。
映画とかは別に重要視しないけども、飛行機が今どこを飛んでいるのかマップが見れないのが、なんともつまらない。
アルマトイには21時過ぎに到着しました。

初めましてのキリル文字。
現地の夜の気温は、既に7度まで下がっていました。
ここで中央アジア用のUberアプリの代わり、Yandex Goでタクシーを呼ぶのですが、なんとホステルの住所を検索かけても出てこない。
もちろんホステルの名前でも駄目。これならどうだと、ホステルの近くにあったバーガーキングの検索をかけても、一店舗も引っかからず。

なんと住所検索機能があってないようなものだったので、自分でGoogle mapと照らし合わせて、アプリ上の何も情報のない地図にピンを立てなければいけませんでした。(ただの不具合だと思いたいんですが。だって不便にもほどがある!)
ここをミスって、完全に関係ない場所で放り出されたらたまったもんじゃない。かなり慎重な作業になりました。


そこを除けば、あとはUberと同じような感じでした。
安さにつられていきなり相乗りに挑戦。空港からホステルまでは30分強ありましたが、タクシー代は500円程度でした。
支払いも、他の方のブログで読んだとおり、日本のクレジットカードはすべて弾かれたので、利用できるApple Payに外貨送金アプリRevolutを紐付け、そこに自分のクレカから入金する… と、二度手間になりました。
ホステルはとにかく安いところを、と適当に決めたので、2泊で2,600円。ドミトリーの二段ベッドの上でした。
公式サイトには選手の宿泊するホテルの情報まで載っていて拍子抜けしましたが、(チャレンジャーシリーズレベルだとそうなの?)さすがに彼らのプライベートに遭遇するのは申し訳ないと思い、泊まるのは控えました。
ハリクアリーナへ
翌朝は早くから会場へ向かいます。
公式練習がこれまた無料で見られるというので。
公式練習なんて、日本では10万円くらいする通しチケットを購入した方だけが見れるものという認識だったので、自分には全く縁のないものだと思っていました。
海外の試合では自由に見れるところが結構あるようです。
せっかくここまで来たのだから、私も見ずにはいられない。

このネットでよく見かけるなんだか専門的なスケジュール表を、自分も参考にする時が来るとは。
初日のショートで成績が振るわなかったジュンファンがフリーでは第一グループになってしまったので、結果的に公式練習も冒頭から行かなければいけなくなりました。
アリーナの周辺には飲食店が全くなかったので、朝から夜までいるのには絶対に食料が必要だなと思い、ホステルを7時前に出てレストランでテイクアウトをし、そこからタクシーでアリーナまで向かいました。アプリはアリーナの名前すら検索できませんでした、汗。
公式練習
8時5分にアリーナに到着。

会場の入り口にはもちろん観戦に来た人や、それを迎えるスタッフがいると思い込んでいたので、誰もいなくて拍子抜けしました。
どこから入ればいいのか分からなくて、アリーナ周りをさまよって、空いている扉を探しました。
入っても、中にいた人達は「誰?何か用?」といった感じ。え、本当に今日試合おこなわれるんだよね?
その場にいた男性スタッフに公式練習を見に来たと英語で伝えたところ、英語ができる女性スタッフを呼んでくれて、彼女に奥へと案内してもらいました。カザフスタンは英語が喋れない人が多かったですね…
エレベーターで2階に上がり、メインリンクへと向かいます。
ハリクアリーナは結構立派でした。

チャレンジャーシリーズは少しだけ配信を見たことがありましたが、イタリアのロンバルディア杯等は一般的なアイスリンクで行われていて観客席も少なく、だからか私もこじんまりとした大会というイメージを持っていたので、なんだか意外でした。
壁にスクリーンもあり、会場設備としては日本の大会とあまり大差ないように思えました。
審査員側の席には行かないようにだけ注意を受け、あとは自由にどうぞと言った感じで彼女は去っていきました。

わお。よくニュースにちょこっとだけ出てくる公式練習だ。本物だ。
そしてリンクにはジュンファンがいました。

これ無料で見れちゃっていいんですか?なにかの間違いじゃないですか?
第一グループは彼だけが目的でしたが、選手一人ひとりの曲かけが始まると、MUSEやRadioheadのCreep等、洋楽ファンの私には嬉しいプログラムがあって興奮しました。
それからアメリカのタイラ・シノハラ選手のプログラムはもののけ姫。衣装も完全にアシタカで、世界観をしっかり表現していて素敵でした。
第二グループの練習の終わりごろに、最終グループのメンバーがリンクサイドにやってきました。

そう、私の最推しのジェイソンが。
スタンド席から彼に声をかけて、国別対抗戦でアメリカチームが着ていたフーディーをここぞとばかりに着てきたので、それを彼に見せて、もちろん日本語で「日本から応援に来たよ!」
日本語が堪能な彼は、「ありがとうございます~!」と、とびきりの笑顔を見せてくれました。
本当はフーディーにサインを貰いたくて布用の白ペンも用意していたのですが、スタンド席から下までは距離があって無理だったので、代わりにトートバッグにサインを貰いました。
一緒に写真も撮ってもらいました。
他にも現地の子達が手帳を持って色々な選手に声をかけていて、スタッフもそれを制するようなピリピリした空気は全くなく。自由な感じでよかったです。

他のファンとの写真撮影に快く応じてくれているジェイソン。
ニカと、シャイドロフ君ことミーシャも出てきたので、彼らにもサインを貰いました。

そう、トートバッグは彼らが出演していた昨年のアイスショー、The Iceのものを持ってきていました。
このショー覚えてる?と聞いたところ、二人共Yeah!と言ってくれました。来年はオリンピックも終わるし、ぜひともまた出演をお願いします。
二カのサインはジョージア語みたいです。素敵だ!
ミーシャはこのままいったらオリンピックの台乗り候補だろうに、君のサインはこれで本当にいいのか。でもそこがいいのかもしれない。いや、よくよく考えたらこれはハートではなく、彼の髪型を模した高度なデザインなのか???
公式練習が終わって時刻は10時半、朝ごはんも食べていなかったので、一度メインリンクから出て、一階に飲食が出来るスペースがあったので、そこで食事をとりました。
ちょっとしたカフェテリアのようになっていて、コーヒーやサンドイッチ、ケーキなどの軽食も取り扱っていました。
テイクアウトした中央アジア料理、ラグマンとマンティを食べます。

ラグマンは麺とスープを分けてくれていたので、つけ麺、にするにはこぼれそうなので少しずつかけ麺しました。
まだ温かくて良かったです。とんでもなくオイリーだけど、野菜もたっぷり入っていて嬉しい~
マンティはお肉がゴロゴロ入っていて、これまた美味しかったです。
アイスダンス
男子フリーの前に、アイスダンスのフリーダンスの試合が行われたので、見に行きました。
ジャッジの席の背後が関係者席になっていましたが、それ以外はどこでも好きな席から見れました。席はスカスカで、日本の大会とは雲泥の差です。
どちらが良いかは一概には言えませんが、とにかく何のルールもない、とてもゆるい空気。動画撮影も自由でした。
ヴァル / カジモフ組のMUSEのプログラムが素敵でした。

(動画のスクリーンショットなので画質は粗目でお送りします)
アイスダンスは滑走順が後半になるにつれ、初心者にも分かりやすく、どんどんダイナミックな動きが増えていきますね。
リズムダンスから特に順位の動きは無く、確かそのままの順位の総合結果になった記憶です。
男子フリー
13時15分から男子フリーが始まりました。
それでもスタンド席は全然埋まらず…
最初のグループの6分間練習が始まる… と思いきや、なんだか人数が少ない。嫌な予感が的中、なんとジュンファンが出場辞退していました。

嘘だろ。
でも実は公式練習も少し調子が悪そうではあったんですよね… ジャンプをほとんど飛んでいなくて。
こちらは素人なので、ジャンプの踏切りを確かめているのかな?と初めは思ったのですが、それにしても全然飛ばないなと。なので、サインを貰いたかったけれど声をかけられませんでした。
というわけで、なんと彼の姿は公式練習で見ただけになってしまいました。
本当に見に行って良かったけれども。ステップシークエンスはとても素敵に踊っている姿を見られたよ… 怪我はしていないことを祈ります。
タイラ・シノハラ

やっぱりもののけ姫がとても素敵だったー!
試合を見に行くと、マークしていた選手以外にも一期一会に、気に入るプログラムに出会えるからいいですね。
ジブリの美しくて切ないピアノの旋律は、絶対にフィギュアスケートと親和性が良いのに、あまり滑っている人を見ないなあと思っていたので嬉しかったです。
彼はこのデニス・テン・メモリアルチャレンジがシニアデビュー戦だったみたいです。大切な試合を観れて幸運でした。
せっかくなので、ジェイソンの為に買ってきていたぬいぐるみを、彼の演技後に投げてしまいました。

リンクに叩きつられたコダックがシュール。
キスアンドクライに抱っこして持っていってくれました。
名前から分かる通り彼は日系で、インスタを見たら日本語が完全にできる方でした。
これからの活躍が楽しみです。
セメン・ダニリアンツ

Creepって、原曲はひたすらじめじめして惨めな曲なイメージなんですが、このカバーに合わせたらこんな情熱的なプログラムになるんだ… と感心しました。
最終グループの6分間練習が始まりました。

ここで一つ、自分にハプニングが起きました。
いつもジェイソンの為に持ってきているレインボーフラッグを広げていた時。なんだかスタッフがこちらをちらちらと見てくると思ったら、なんと屈強そうなセキュリティの男性を呼んできて、しかめっ面の彼に、身振り手振りで「外しなさい」と怒られました…
突然、この国がイスラム教国だという現実を、しかと目の当たりにさせられました。
そうか、こういう自由も、あたりまえじゃない国があるんだと。
この話、特にSNSには投稿したくなかったんですよね。叩かれて炎上するかもしれないなと。フィギュアスケートに全く興味がなくて、ただLGBTに対して嫌悪や憎悪のある人たちも、こぞって叩きに来そうな話題ですよね。
最近は世界中が憂鬱なニュースばかりですっかり精神が疲弊しているので、今の私にはそういう悪意と戦う気力はないです。
フィギュアスケート選手の中には、LGBTコミュニティーに属している人が多く、何人もカミングアウトをしているし、啓発活動をしている人もいます。一方で、日本のファンの人がどこまでリベラルなのかはあまり自信が無いです。年齢層も私より高いと感じるし。
SNS、中でも選手の投稿へのコメントをたまに見ると、結構時代錯誤で失礼な発言をしている人がまだ沢山います。紀平さんのアイスダンス転向のニュースに、男が出来たってこと?とコメントしたり。
今年の4月に国別対抗戦を見に行った時にも、会場で年配の男性に捕まり、選手たちへのほとんど中傷に近い批評を次から次へと披露されて、苦笑いが止まりませんでした。
ジェイソンの演技中、例のセキュリティの男性はずっと私の前にいて、すっかり肝が冷えました…
着ていた服のせいで、どの選手の為のフラッグかバレバレでしたね。というか、最終グループの選手の国籍は中国、韓国、ジョージア、カザフスタンと、よくよく考えたら同性婚が合法化されてない国ばかりでした。
しかしながら、私もなにもここで何か議論や問題提起をしたかったわけでももちろんないので、おとなしく旗をしまいました。
まだまだこの世界は自由からは程遠い事を痛感しました。
シヒョン・イ

王道のボレロ。昨今、現代のポップミュージックで滑る選手が増えてきているので、逆にクラシックの良さにも改めて心を打たれます。
彼はスタイルが良いのもあって、なんだかすごく華がありました。男子に珍しい、手を上げたスッとしたジャンプが印象的でした。
順当にいけば彼もオリンピックで見れるのだろうか?オリンピックシーズンともあって、素敵なプログラムを見るとすぐに、この演技はオリンピックで見たい!と思ってしまいます。(現地に行く予定はありませんが)
ジェイソン・ブラウン
彼の美しい演技には、いつだって陶酔のため息を漏らさずにいられません。ひたすらシームレスな、流れるようなスケーティング。

彼以上にフィギュアスケートに愛されている人はいるだろうか。
未だにジャンプの見分けがついていないものの、プロトコルの読み方は少しわかってきたので、彼の演技構成点がいつもトップなのを見て満足げに頷いています。
ニカ・エガゼ

ジョージアを代表する彼も、パワフルな演技を見せてくれました。やっぱり4回転が入るとダイナミックさがあるなー
ミハイル・シャイドロフ
さて、楽しみにしていた彼の今シーズンのフリープログラムのお披露目です。

まず目を奪われたのは、衣装。とても素敵でした。
カザフスタンを旅していて、この国は模様のデザインが得意なのだなと思いました。街中で素敵なモチーフを目にしたので。彼の衣装もなんだか民族衣装のよう。(別にデザイナーはカザフスタンの人じゃなかったらすみません)
プログラムは賛否両論だったようですが、私の第一印象はというと、後半がTake On Meじゃなかった!とかいう、なんともしょうもない事を考えてました。
個人的にはエキゾチックで、ユニークな振り付けもあり、結構気に入りました。まだまだシーズンが始まったばかりなので、これからどんどん化けていくのではないかと、わくわくします。
観客席からは黄色い声が多く聞こえて、すでに本国の羽生君のような立ち位置にいそうだなと感じました。
表彰式
奇しくもトートバッグにサインを貰った3人が、今大会のメダリストになりました!最強だ~

表彰台はキスアンドクライの場所に用意されていました。
ジョージアやドイツの国旗を見かけなかったので、どうするんだろう… と思っていたら、選手は国旗を持たずに表彰式が終わりました。こういう大会もあるのかあ。
日本人選手が誰も出場しない大会だったこともあり、日本から来た人には誰にも会いませんでした。(日本人のカメラマンの方が1人いらっしゃったことはSNSで知りました)
無料というのもあり、観客席には私より年下、それからティーンエイジャーと思われる子達も多くいました。
日本はどうしてもチケットが高くなってしまうから、ファンの年齢層が偏るのは仕方がないなあ。
私がジェイソンを初めて知った頃も学生でしたし、当時はフィギュアスケートの大会を現地に観に行くという発想はありませんでしたね。
海外のフィギュアスケート観戦、とっても新鮮で楽しかったです!やっぱり来てよかったー!
19時半からエキシビションがあり、こちらは入場料が発生するため、一度アリーナから退出することになりました。
それにしても、この大会は本当に観客が来ることを想定していたのだろうか… 表彰式終了の16:40から再び開場する18時半までの空白の約2時間、試合を見ていた私達は全員、周囲に何もない、何もすることのない土地で、外に追い出され、完全に放置されたわけです。
仕方がないので、ベンチに座って撮った動画を見返していました。
再び開場するのを待っていると、段々と日が暮れていきました。
長くなってしまったので、エキシビションについては続きに書きます。
アイスショーは何度も行ったことがありましたが、カザフスタン主催の、現地ならではのショーを見ることが出来たので、とても満足でした。